フィンランドの総合教育
フィンランドの総合教育は、日本でいう小学校6年と中学校3年の計9年に該当します。
日本と同じく、フィンランドでも総合教育は義務教育です。
違うところは、フィンランドは総合教育が無料であり、カリキュラムの自由度も高い点です。
総合教育への入学手続き
フィンランドの総合教育は市町村が運営、管理します。
市町村は、毎年初めに義務教育通知書(oppivelvollisuusilmoitus)を該当する家庭に送ります。この通知には、子どもの地元学校(lähikoulu)が記載されています。
地元学校とは、家に最も近い学校のことです。保護者は、子供を地元学校以外の学校に通わせることもできますが、必ず許可されるとは限りません。
総合学校の入学手続きは、市町村から通知された地元学校で行うか、オンラインで登録可能な場合もあります。これは個別にホームページで確認しましょう。
申し込み時期は1月です。
英語学校とその他の言語による教育
大都市には、インターナショナルスクールや、英語で授業を行う学校があります。
英語以外にも、ドイツ語、フランス語、ロシア語で授業を行う私立学校もあります。
これらの学校に関する情報は、市町村のウェブサイトで見つけることができます。
特別学校
子どもに特別な才能があって、特別な教育を受けさせたい場合は、特別学校に通わせることもできます。
特別学校とは、特定の科目を専門に学ぶ学校のことで、私立が多いです。このような学校では、次のようなことを専門にしています。
- アート
- 音楽
- 体育
- 特殊な教育法(例えば、シュタイナー教育法)
学校のスケジュール
総合学校は8月に始まり、5月下旬から6月上旬に終わります。6月と7月は夏休みです。
学校のスケジュールは学年によって異なります。学年が上がれば上がるほど、授業のコマ数は多くなります。一コマは45分、1週間の授業は、通常約20コマです。
お昼の給食も無料です。食事に特別な配慮が必要な場合でも対応してくれます。素晴らしいですね!
就学前教育とは違い、総合学校からは多くの必修科目を学びます。小学校の最終学年と中学校では、選択科目を選ぶことができます。
就学前教育と同じように、総合学校でも、子どもたちは自分の宗教や倫理について、教育を受けることができます。
特定の宗教についての教育は、ある市町村にその宗教の子どもが3人以上いる場合には、必ず行います。
フィンランドのこうした取り組みは、子どもたちのアイデンティティ確立に非常に大きな影響を与えます。
特別学校では、特別な才能がある子どものために専門の学びを用意しますが、特別学校でなくても学校によっては、特別クラスを設けるところもあります。
入学時に別途申請が必要ですが、特別学校に通わせるよりはハードルが低くなります。音楽や芸術などの才能がある子どものために、こうした幅をもたせた教育ができるのもフィンランドの素晴らしい所ですね。
移民と総合教育
フィンランド語(またはスウェーデン語)を母国語としない子どもたちは、予備教育を受けることができます。
予備教育とは、普通のクラス(フィンランド語で行われる)に参加できるくらいの語学力が無い子どもたちを対象に個別指導を行うことをいい、通常は1年間行われます。その後、普通のクラスに編入されます。
移民の子どもたちは、自分の母国語を勉強すると同時に、フィンランド語またはスウェーデン語を第二言語として学ぶことができます。
総合学校とのやり取り
フィンランドでは、学校との重要事項の連絡は「Wilma」というオンラインサービスを使っています。
ユーザー名とパスワードは学校から通知され、Wilmaを通じて、先生と連絡したり、子どもの学習状況、試験や欠席、学校行事や休日などの情報を受け取ることができます。
子どもが病気などで学校を欠席しなければならない場合は、当日の朝にWilmaで連絡するだけで済みます。
Wilmaの使用方法は英語でも公開されていますが、どんな物かなと気になる方は、こちらからご覧になれます。
父母会
フィンランドでは、すべての保護者を対象に、定期的に父母会を開催します。
父母会は学校の先生や、ほかの保護者と知り合う貴重なチャンスです。また、子どもの学校での様子、勉強の出来具合などについても教えてもらえるので、家では見れない子どもの一面を覗くこともできます。
もちろん、移住して間もないときは、わざわざ父母会まで待つこともなく、心配なことはどんどん相談しましょう。
サポート体制
総合学校にはカウンセラーが在籍しており、子どもたちの勉強方法、進学、職業選択について相談を受けたり、指導してくれます。
家庭問題など、特別な支援が必要と判断された子どもには、心理カウンセラーとスクールソーシャルワーカーがサポートします。
一時的に勉強についていけない場合は、教師が短期的な補習をやってくれます。
集中力が続かない子どもに対しては、少人数での特別支援教育を提供します。
9年目の卒業年になって、「まだ進路が決まらない」「もっと成績を上げて興味のある分野に進みたい、そのための準備をしたい」といった場合は、総合教育を1年間延長(10年目)することもできます。
終わりに
今回の記事では、フィンランドの総合教育についてまとめてみましたが、一番印象に残ったのはサポート体制うち、10年目を設けることでした。
私自身を振り返ってみると、15~16歳は「自分は何者で、何ができて、何になりたいのか」がわからず、苦しい年頃でした。
誰にでも訪れる所謂思春期ですね。
そういう意味では、総合教育の10年目は、自分と向き合い、進める方向を見極める貴重な時間だと思います。
同学年のお友達がみんな進路を決めて羽ばたいていく。自分だけが10年目に入り、取り残されたと感じる。
憂鬱になることも多々あるでしょう。
でも、目の前の一時的な損得に惑わされず、時には立ち止まってじっくり考え、次の飛躍のためにエネルギーを蓄える。
長い人生を幸せに生きるためには、そういう勇気、時間こそが大事。
私はこう思えてなりません。
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